ギブスン。
■ ドライ・ベルモットのロックを飲んだ。
イタリアの、二番目にポピュラーなものだったから、すこし甘かった。
「レモンか、ライムを垂らしちくれ」
と、言わんかとしたが、連れの馴染みの店だから遠慮した。
最低の社会性はあるのだ。
■ マテニィの作り方をとやかく言うのは野暮である。
マルチニとも言うし、マティニとも書く。
「エキストラ・ドライ・マテニー」などとも言う。
どうでもいいのであるけれど、近頃のはほとんどジンの味だ。
おおむね、四角くて男性がスカートを履いた絵柄のものを使う。
混ぜた場合、一番馴染み易いからなのだろう。
ドライであれば良いのかと思い、若いバーテンダーが、緑いろのまるを使う。それでいて、ベルモットが一番甘い奴だったりする。
そういうのは、すこし困るな。
言わないけれども。
■ ツツジが咲くようになると、すこし汗ばむ。
昼が長くなって、ブラウスの後ろに蝶々がとまったような筋が透ける頃には、宵の口、キリッとしたギブスンを頼む。
旨く作られたギブスンは、透明な背中を思い出させる。
出来れば三口位で飲み、普段吸っている煙草を吸って、キャッシャーの女の子に軽口を叩いて帰る。
別に格好をつけている訳じゃないけれども、ジェリー・マリガンというひとの、「ナイツ・ライツ」というアルバムは良いですよ。
ジャズが好きではない人にもね。